人間万事塞翁がポニーガール
【免罪符】
昼に休憩をはさんで流動食のようなものを飲まされ、バケツにおしっこした以外は、ずっと走り続け。
これでも美脚のつもりだったけれど、パンパンにむくんでしまいそう。
膣のゴム球とアナルの刺激は、私にとって完全にポニーという行為とセットになってしまった。
その刺激の出口を夢見て走る淫乱に堕ちた女の子にされてしまった。
夕闇が迫り、やっと訓練が終わった。
サラを乗せたまま納屋に戻り、馬車を戻し、ハーネスを外してもらった。
私のお股からは恥ずかしいほど粘液が垂れ、貞操帯カバーの黒革を汚していた。
ハーネスを外す時に、なぜおっぱい丸出しなのかわかった気がした。
自分で眺めても、物欲しそうにいやらしく尖りっぱなしの乳首が今でも全然収まらない。
これに今の私の気分が全て集約されているような気がした。
顔面をハーネスで拘束されていると、遠目には私の表情なんてわからない。
遮眼帯着けたり頭に飾りでもつければなおさらだろう。
でも、今私がどんな気分なのか、この尖り具合を見ればわかってしまう。
ここでのポニー調教は現在私一人のようだが、もし数人居て、私が他のポニーの子の胸がこうなっているのを見ればまるで自分のことのようにその恥ずかしさと、……そして……誇らしさ、主人の命令を嬉しく受けて嬉しく従ってそしてきもちよくなってる誇りのようなものを見てとることができるだろう。
だから胸が出しっぱなしなのだ。
これは個人的な思いつきだが、きっとそうに違いない。
だって、朝は早くカバーくださいと言ったにもかかわらず、今の私はこの乳首の尖りすら見せびらかしたい気分だから。
手綱を付けられ、直接厩へ移動。
轡とハーネスを外された。
「もう本館での食事はないと思います。汚れがひどくなるまではその馬具は外しません。髪の毛もしばらくそのアップのままです」
「あ、あの、はふっ、今日は、私は、いいポニーでしたか?」
「おちついてモトコ。まずは排泄、食事、それからご褒美です」
「はふっ、はふっ、がっついてすみません。ああ……」
自分でも恥ずかしいけど、気持ちが高ぶってもうダメって感じだ。
まず革パンツが外され、貞操帯のお尻の蓋が外された。
昨日はあんなにガッチリ咥えていたのに、今では押さえがなくなったとたんヌヌヌと抜けて来た。
「ああっ!」
たまらない喪失感と甘美なアナル刺激に襲われる。
抜けたら少しアナルが閉じるのを待ってからお浣腸が入れられた。
「ちゃんと閉じるでしょう? 毎日こうやってお浣腸我慢する練習もしていればユルユルになったりしませんから安心です」
「はい…… ああ…… ぬあ、来た」
「波の2・3回はやりすごさないと練習になりません。ユルユルになっても良いのですか?」
「ぬううう、がんばります」
しばらく頑張ってからトロけるような気持ちよさで排泄し、お尻を別なバケツの水で洗ってもらった。
「これ、始末してきますから食事をしていてください」
本当の馬ならかいばおけなのだろうが、古びた木のベンチに小さな桶が2つ載っていて、片方に水、片方に固形の食品が入っていた。
アームザックで本当に腕から無くなったのと同じ状態なので、桶に口を突っ込んで匂いを嗅いでみた。
見た目カロリーメイトを切り分けたように見えたが、もう少し手作りっぽい感じで、おいしそうな匂いがしていた。
まだ自分の排泄した臭いがのこっているけれど、もともと風通しの良い厩なのでもう気にならない。
1ブロック2cm角の立方体のような食品をもそもそカリカリと食べて、水を飲んだ。
サラが戻って来た。
「食べました?」
「はい」
「ではおまちかね、ご褒美です」
「ああ…………」
「まずはキスから」
「や、食べたばかりで私、口の中が……」
「きにしません、舐めとってあげましょうか?」
「嫌あ、嫌あ」
口で言ってることと頭の中がもうばらばら。
サラは本当に私の口に唇を重ねるや否や舌で前歯から奥歯へ歯茎についたかすまで舐めとって私の舌の上に運んだ。
「むうっ、むうっ。」
「はい、ごっくん」
「ええ?」
躊躇していたら唾液を送り込まれ、無理矢理飲まされた。
ひどいことされているのに頭がぼうっとなって、お股がカッカと火照ってくる。
膣がうごめき、お尻の穴が寂しくなる。
サラの指がお尻に入った。
「嫌あ。嫌あ」
「やはりアレが無いと寂しいでしょう」
「嫌あ、アレ苦しいです」
うそばっかり。
「走っている時と同じにしてイキましょうね」
「嫌あ、ほんとに壊れます、壊れます」
嫌がってもやられてしまうということに期待して、口ばかりで何度も嫌がるのがどきどきしてきもちいい。
「嫌あ、嫌あ」
サラが後ろに回る。
「モトコ、煽りが上手になりましたね。本当にして欲しいことしてあげます」
サラはさっき抜いたディルドーを消毒してたっぷりワセリンを塗り込めた。
それを貞操帯の後ろの蓋に取り付ける。
「嫌あ」
「目がそうは言ってないですよ」
「わーーっ!」
嬉しくて死にそうだった。
私のお尻はぽっかり記憶したサイズまで広がり、わずかの抵抗を伴ってそれをうけいれた。
「前の蓋、あけますね」
蓋の穴からは泡立つように粘液が吹き出ていた。
ドロドロの蓋を外されると、中もドロドロだった。
「今日は指がいいかな」
サラは私を後ろから抱くと、私の2つのおっぱいの下を支えるように腕を回し、そのまま持ち上げるようにして乳首をつまんだ。
「はふっ!」
「ずっとカチカチでいやらしくなりましたね。モトコの気分はここを見れば一目瞭然」
「ああ……」
「ご褒美ほしくてがんばったココはこんなに……」
粘液を指ですくって私の口に押し込んだ。
「あむ。ぴちゃぴちゃ。ああ嫌あ」
「あはは、自分から舐めてるのに嫌はないでしょう」
サラはそのまま指を私の股に戻し、開いた陰唇の隙間をしごく。
膣口はゴム球のディルドーを固定する金具に覆われていて触れないが、尿道からクリトリスにかけての短い露出部をしごかれるだけでたまらなくきもちいい。
「あっ、あっ、あっ、あっ」
ああ、また何か来る、すごいのが。
子宮口の刺激と限界拡張アナルの刺激がとうとう出口をもらえる時が来た。
ついにクリトリスをこすられた。
「ひーーーっ」
タマシイが潰れそうな声が出る。
どんどん昇って、意識が薄れる。
ぱーっと視界が明るくなり、ふわっと体が浮いて、全身が痙攣し始めた。
浮遊感に飛ばされそうで怖くなって、サラにしがみつきたいのに、ああ私、腕がない。
ちょっとだけ寂しくなったが、そのまま絶頂を迎え、気持ちよく意識を失った。
それから毎日、馬車を引いて走る訓練の繰り返し。
だいたい毎日夜にはご褒美してもらえる。
でも少し馴れ合ってきてフォームが崩れたら、ご褒美なしにされて眠れなかった。
今日、馬場から納屋に戻る時に大きな石があって、ゆっくり通ればよかったのに、ご褒美がまちきれなくてスピード出してしまい、石に乗り上げて横転しそうになった。
「モトコ、あなたわかってますか! もう少しであなたは大怪我するところだったんですよ! 馬車が横転したら手の使えないあなたは馬車ごと頭を打ち付け、最悪頚椎でも折れれば即死ですよ!」
すごい形相だった。
「おしおきです」
私はサラの剣幕に驚き、ご褒美目当ての軽率な自分に落ち込み、お仕置きの苦しさに恐怖し、わあわあ泣きながらあのやぐらまで引っ張られていった。
でもサラは自分こそ馬車から投げ出されて泥だらけになったことには微塵も触れず、ひたすら私の心配をしてくれた。
それなのに浮かれていた自分が申し訳なくてどんどん涙が溢れてきた。
「フヒンハハイ! フヒンハハイ! フヒンハハイ! フヒンハハ……」
必死に声にならないごめんなさいを繰り返しているが、サラは黙々と私にガスマスクを被せやぐらの窒息営巣の奥へと押し込み、チェーンで全身を固定した。
「フヒンハハイ……」
呼吸制限されているのに泣きやめない私は、あっというまに酸素不足になった。
「フヒイ」
一度目の失神。
気付くと内股が冷たかった。
おしっこ漏らしていた。
ぷぴいぷぴいとマスク内で鼻汁がちょうちんとなって膨らんでいるのがわかる。
口の中は鼻からおりてきた鼻水でしょっぱく、目は開けていられないほどドロドロしていた。
暗闇なので目は関係なかったが、鼻も口もいますぐなんとか拭いたいと思った。
呼吸はおちついてきたはずなのに、どんどん苦しくなる。
あの呼吸制限プログラムが作動しているようだ。
どうせもう一回失神させられるのだろうと思っていたら、鼻水がつまってパニックになったとたん即落ちた。
気付くと、まだ暗闇の中。
しばらくじっとしていたらゴトゴトと背中側で戸が開く音がした。
チェーンとマスクを外され、やっとおしおきから解放された。
もう夕方だった。
「ハラ、フヒンハハイ……」
私はまた必死で謝った。
サラは布で顔を拭いてくれ、鼻をかませてくれた。
同一の布で顔も鼻汁も拭くのが外国人っぽかった。
「モトコに怪我がなくてなによりです。こんどはもっと慎重にお願いします」
私はこっくりと頷いた。
「モトコ、喜んで下さい。今後の予定がほぼ決まりました。あなたのお宅はセントラルシティのはずれでしたよね。そこから少し離れたところに大きなちょうちんの下がった有名なお寺があります。その近くは今でも観光リキシャがはしっていますよね? その地域での営業許可を取りました」
「フへ?」
「モトコはポニーガールタクシーになるのです」
「ヘエエエエ?」
「厩でゆっくり説明します」
ふらふらの体に手綱を付けられ、夕陽の中を厩へ戻った。
サラは厩の隅にあった木箱を持ってきて座り、私は轡を外されて藁に足を崩して座った状態だ。
「祖父の話はしましたね」
「はい」
「今アメリカの自宅で療養していますが、心臓の病気がそろそろ危ないようです。本人はあなたのおじいさんに復讐したい一念だけで命をつないでいるような状態です」
「…………」
「自家用機で成田ではなく羽田に着いて、そこから船で水上を移動し、あの寺のすぐそばにある船着場から上がって、そこにモトコを待機させます。そこで祖父をモトコの馬車に乗せ、そのままモトコの自宅に直行します」
「そんなことしてまでして復讐したいのですか」
「祖父のせいで私もゆがみました。こうなればとことんやるまでです。モトコもここまできたのですから、最後までつきあってください」
「ところであの…… ポニーガールタクシーって?」
「そうでした。祖父を迎えるための準備です。浅草のリキシャ、横浜のヴェロタクシー、人力の乗り物増えていますから同じリキシャの町でポニーガールタクシー始めます」
「い! 嫌あ!」
「大丈夫、顔は出しません。遮眼帯の他にアイマスクをしてもらいます。アイマスクには小さな穴が明いていますから、進む方向くらいは見ることができます。それにエンブレムやプルーム、装飾の入った轡などで飾りますから、モトコだとはわかりません」
「おっぱい丸出し嫌あ」
「あはは、いつか言ったでしょう、さすがにそれは叱られるって。ちゃんと革製のブラを着けてもらいます」
「少しほっとしました」
「メディアに期間限定と言って宣伝しますので、テレビの取材は来ますよ。スポットCMも流します」
「ええ? そんなことしたら、私もう戻れない!」
「そこから先は私にもどうなるかわかりません。祖父の気が済んだらモトコを解放するのか、アメリカに持ち帰るのか」
「私、もう完全にモノ扱いなんですね」
「個人的にはモトコといっしょに居たいですが、私も祖父の手先という立場なので」
私はこの甘い生活にも終焉があることを知って、寂しさと不安を覚えた。
「モトコのポニーガールタクシーが世間に周知されたところでモトコの家に乗り込み、そこでアイマスクを外して、完全調教されてポニーに堕ちた愛弟子でもある孫娘をあなたのおじいさんに見せつけ、精神的に復讐しようという計画です」
「ああ……」
私はまだサラのおじいさんの復讐ということが実感できていない。
どんどん復讐の道具として完成されてゆくのはなんとなくわかるが、そこまでの憎悪を感じない。
それはサラ自身には憎悪が無いからなのだろう。
そんなことより私はポニーガールタクシーのことで頭がいっぱいになってしまった。
「もうすぐ車両が完成しますから、そうしたら全ての装備を着けてみましょう」
私はハッと青ざめた。
「あの、全てというと、ピアスもですか?」
サラはその質問を予期していたかのようににっこり笑った。
「モトコ、二枚目の免罪符、いりませんか?」
「え?」
「一枚目の免罪符は精神的、二枚目の免罪符は肉体的免罪符です。二枚目は一枚目の効力を確実なものにし、さらに増強します。一枚目はもう、持っていますよね? でも、精神の容れ物としての肉体が普通だと、ともすると一枚目の免罪符は破けそうになります」
「そんなことはないですよ……」
「しかし肉体的免罪符も手に入れると、まず破れません。肉体改造されてしまえばそれを理由にできるのです。『こんな体にされてしまったからもうだめだ』って。もちろん、私の改造は全部可逆的です、水を差すようですけど」
「元に戻せるのですか?」
「ピアス穴はピアスを外してしまえば乳腺開口部を邪魔せずに塞がるように明けますし、クリトリスのピアスも、外せばすぐに塞がってしまいます。鼻輪の穴はやや大きいので簡単な手術が必要ですが、そこまでしなくても鼻輪を外せばだれにもわかりません」
「なら、なんでわざわざ」
「モトコの言うとおり、戻せる改造はしょせん首輪と同じく記号に過ぎません。でも肉体改造は見た目の絶望度がものすごくて、戻れることを忘れてしまうほど強烈ですから充分二枚目の免罪符となり得るのです」
またしても私はもうダメだった。
興奮し切った瞳を向けただけで、サラにはうそをついてもダメだとばれてしまった。
「明日、やりましょうか」
「はふっ、はふう」
「今日のご褒美のおかずは決まりですね。さあ、先に夕食を済ませてください」
「ああ、うう」
私は用意された夕食のブロックをガリガリと食べて水を飲んだ。
「ふふふ、ひと舐めでイキそうですね」
「はーーっ、ふーーっ、ああ、もうだめです」
サラが私の革パンツを外し、貞操帯の前の蓋を開けて、ギラつく尖りを口に含むと、私は一撃で昇天した。
朝が来るのがこんなに怖かったことはない。
昨晩出さなかった排泄を世話してもらい、朝食をかじると、そのまま久々にコンクリート棟へ連れ出された。
寒々しい手術台のようなベッドがあり、ポニー姿のまま下半身は貞操帯まで全て外されてそこに横になった。
台のビニールが冷たくて、体温を奪われる。
サラはいつもの格好で革グローブを左右とも外すと、手術用の手袋をはめた。
随分久しぶりに見るアシスタントの男が2人、青い手術エプロンに手術手袋で傍らに立っていた。
「最初はクリトリスから。全部麻酔ありですから痛くありませんよ」
「そんな! 一番敏感なところからなんて」
「大丈夫。さあ麻酔しますよ。私は注射が上手です」
サラは慣れた手つきで私の鼻の穴の内側左右と、左右の乳首、クリトリスに麻酔した。
「針が細いので何も感じなかったはずです」
「はい、液が染みこむ感じはいたかったです」
「それは我慢です」
「もうへいきです」
特に、クリトリスが一番痛くなかったので驚いた。
周囲の組織が硬いほど液がはいる時きついんだ。
クリトリスのピアスは全く見えず、何をされているかわからないうちに終わった。
乳首は突き抜ける抵抗が肉の感触を伝えて生々しかったが、全く無痛なのでこんなものかという感じだった。
鼻輪はちょっとショックだった。
炎症防止のためか、先の細いレーザー脱毛器で中央寄りの鼻毛を全部脱毛された。
そこへ、針ではなくパンチのような鉗子を当てられ、穴が明けられた。
黄金のリングを通され、カチリと閉じられ、視界の下端に常にリングが映ることに気づいたとき、鼻輪の絶望に襲われた。
すごい、もう私、完全に家畜なんだ。
麻酔の切れないうちに貞操帯を戻され、クリトリスにはべっとり薬を塗られて蓋をされた。
乳首はリングの先に球がついていて、そこからいつかみたプレートが下がっていた。
こ、こんなの、もう元に戻れるわけないよ。
所有者の名前と自分がポニーである証明まで敏感な肉に直接取り付けられてしまって……
麻酔が切れてきてずきずきしだしたらいたみどめを飲まされた。
最初感じた恐怖はたいしたことなかった。
痛みもほとんどないし、今も痛くないから。
それよりもサラの言っていた視覚的な絶望感が予想以上で、今も涙が溢れそうだ。
「モトコ、素敵になりましたね。轡を着けて今度はしっぽと子宮口ローターの調節です」
「なんですかそれ! わーーん」
ああ、とうとう泣いてしまった。
「モトコ、モトコ、ごめんなさい、急ぎすぎました? きもちいいので早く味わってほしいと……」
「いいです、やってください、めそめそ」
「しっぽは基本今までのディルドーと同じですが、先端が膨らむので抜けなくなります。夜の排泄時にしぼませて抜き、挿入したら膨らませます。いつも排便の焦燥感がつきまとうようになります。ディルドーというよりプラグ(栓)ですね」
「嫌あ」
「子宮口ローターは今やりながら説明します。まずは先端のゴム球の水を抜きます。そしてここのピンを押し込むと先端が少し上を向きます」
「ああっ!」
子宮口が何かでぴんとはじかれたような感じがして声が出た。
「これで子宮の中に先端が入りました。ここで最初のゴム球と3つめのゴム球に水を入れると……」
「ひっぱられる!」
「これで子宮口は前後から挟まれてロックされました。ここで中央のゴム球を膨らますと……」
「へん! へん! 入り口が拡張されるへんなかんじが!」
「ここでストップです。これも子宮口を拡張するのが目的ではありません。内臓された超小型ローターを密着させるのが目的です」
「ひーっ」
「しっぽも新しいのと交換して……」
文字通りポニーテールのついた先端が膨らむプラグと交換されてしまった。
「水を入れますね」
「ひーっ!」
排便焦燥が! トイレで出したい! このままで走るなんて無理!
「すごいでしょう、一瞬でパニックです。ではローターを……」
サラがリモコンを操作すると、子宮口が容赦なく振動させられた。
「わーーっ」
本当にパニックだった。
「さあ、今日の調教です。それらすべて免罪符ですから、もう戻れないという理由に使ってくださいね」
もう、もどれるわけ、ない。
サラは轡を嵌められてもまだふらふらの私を納屋に連れてゆくと、ハーネスを装着させ馬車を繋いだ。
ウイルキンソン家の紋章のエンブレムが嵌め込まれた革製の帽子のようなものを被らされ、それに自動車のほこりとりの毛ばたきを小さくして真っ赤に染めたようなプルームが立てられた。
首輪や腰に小さな鈴を下げられた。
ピアスの保護のためか革製の胸カバーもしてもらった。
そこまで身支度を整えてもらってもアナルの焦燥と子宮口の振動でグダグダな私をサラは鞭うった。
「フヒイッ」
何一つまともに考えられない中でなんとか足を動かして走りはじめた。
鈴がシャンシャンと鳴る。
体が揺れるだび、上唇に当たる鼻輪が心を抉(えぐ)り、家畜になった絶望に神経が途切れそうだ。
今までの訓練はまさにこの状態のためと言っても過言でないほど、思考を封鎖されても体は訓練通りに動いた。
何度も脱走したことが遥か昔の懐かしい思い出のようだ。
今こうして抗う意思すら、それを考える時間すら奪われてポニーとして働かされて喜んでいる私がいるのだから。
完全に堕とされた上、優しさや義理や同情でがんじがらめにされ、更にそれをはね除ける心の力も奪われている。
これはストラップ拘束の上から革袋を被せ、さらにローター責めと呼吸責めを加える超拘束調教とおなじだ。
心の超拘束責めにあっている。
そして更にその上から免罪符の甘い罠が染み込む。
肉体改造され、アナルと子宮を常にいっぱいいっぱいに刺激され続けて、どう抜け出せというのだ。
もうだめに決まってる。
だから言いなりに従うしかないのだ。
サラは私が負けたとき再挑戦しろと言った。
今の私は、とてもそんな気にならない。
サラのおじいさんの思惑通りに堕ちる快感に浸るだけでせいいっぱいだ。
おじいちゃんごめん、ほんとごめん。
せめてもの望みは、そんな孫娘など知らんと言って復讐の矛先をかわして欲しい。
シャンシャンシャン。
鼻輪が揺れ、背徳の闇に落ちた私の禁断の喜びを表すように、軽やかに鈴が鳴る。
夕暮れまで訓練が続き、私はずっと淫夢の中で走り続けた。
「モトコ良くがんばりました。今日もご褒美あげましょう」
「フフーン」
自慢げな鼻息に聞こえるが、もっとねっとりあふーんと言っている私。
轡を外してもらう。
「はふっ、はふっ、はふっ、お尻の、お尻の抜いて下さいいいい」
「まだ慣れませんか」
「うんちもれちゃう!」
「そう思えるだけですよ」
「はやくうううう」
「はいはい」
サラは仕方ないというように笑うと革パンツを外してしっぽの水を抜き、しっぽ付きプラグを抜き取った。
「あああん!」
中身が一瞬もれそうになるのをこらえ、お尻の穴が戻るのを待っていたら、さっきの排便焦燥はどこかへいってしまった。
「だから言ったのに」
「でもお」
お浣腸されて普通に出して、食事して、今日はたっぷり舐めてもらってイッた。
翌日、ポニーガールタクシーの車両が出来上がってきていた。
2人乗りの客席の前に御者席が付いた特殊な形。
折り畳み式の天蓋がついていて、前方を見なければ人力車にそっくりだ。
ただし、折り畳み天蓋の仕掛けがそっくりなだけで、人力車が大正時代の和風デザインであるのに対し、こちらはやはり馬車
とわかるディティールになっている。
御者席が余分についているが、もともと人力車は車夫の引く棒までの長さが長いから全長で比べると同じくらいだ。
タイヤは2輪かと思ったら、御者席の下に自由に動く小さなタイヤが1輪ついていて3輪だった。
サラが私にハーネスを着け、タクシー用馬車に接続した。
「すぐに正門に向かってください。見てわかるとおり、これは舗装路用の仕様になっていますから、自動車用の舗装路でテストします」
サラを乗せると、合図に従ってすぐ正門に向かった。
私が脱走したのは裏道で、正門は私が拉致された時に車に乗せられて入った方だ。
複雑な気分だが、子宮の刺激と排便焦燥はいつもあるので余計なこと考えていられない。
ゲートを守衛らしき男が開けると、詰め所から別の2人が出てきた。
サラが合図すると英語で喋りながら遠慮なく私の馬車に乗った。
ドスンとサスが沈む。
しかし3輪なので振動で少し体が上下した程度だ。
ピシリと手綱が鳴ったが…… 無理でしょ、これ。
「ウーーーーン!!」
車体は何で出来てるのかわからない縞模様がギラギラする真黒な角材がメインですごく軽いのがわかるけど、サラは小柄としても大柄の外人男性2人の計3人は無理だよ。
それに舗装してあるとはいえ山の下り坂、このまま行ったら取り返しのつかない事故になる。
「まってモトコ、今スイッチ入れます」
ハア?
急にガクンと軽くなり、ハイステップまでできるほどになった。
「コントロールは私の仕事。あなたは命令通りに動力として働いていればいいのです」
そうだった。
上唇に常に触れる鼻輪に自分の立場を思い出し、余計な心配はやめた。
下り坂なのに程よくブレーキが効き、姿勢が崩れそうになるのだけ注意すれば馬場での訓練と同じ。
なるほど、ちゃんとブレーキを装備しているのか。
それにしては耳障りな音がしないけれど。
鼻輪ぶらぶら、鈴の音がシャンシャン、蹄がガツガツ、ポニーガールタクシーふもとへ下りてゆく。
途中で気付いた。
帰りは地獄なのでは?
ところが帰りも楽だった。引けば引くだけ勝手に馬車が加速する。
「驚きましたか、モトコ。あなた一人の力では営業むりなので、電動アシスト付けてあります。下りは回生ブレーキで充電、平地でモトコに余力があれば、引っ張りながら充電もできますよ。システムチェックのテスト走行でしたが、完璧です」
なんとなくズルい気がして腑に落ちなかったが、本気で営業するなら私にとって不可欠なシステムだと納得した。
私を、そしておじいちゃんを貶めるための壮大すぎる仕掛けに驚き怪しみながらも、本気であの町をこれを引いてタクシーになるんだと実感した。
ご褒美後……
「はふっ、はふっ、ピアス引っ張るの反則う……」
「あんなに感じていたじゃないですか 引っ張り方にもコツがあるのです。ピアスホールがまだ安定してないので、乱暴に引くといたいですから、こうじんわりテンションかけると金属に貫かれている実感が……」
「はふっ、はふっ、また欲しくなるのでもうやめてください」
「はいはい、そうだ大事な話です。あした、シタマチの営業所へ移動します。もうここへは戻ってきません」
「えっ?」
「うれしいでしょう、ずっとさびしいところへこもっていましたからね。それにおうちのちかくですし」
「え、ええ……」
確実におじいちゃんと私の破滅へのコマが進められて行く恐怖に、とてもうれしくなんてなかったが、それとは全然別にこの山中の秘密施設の景色と別れるのがたまらなく淋しくなった。
あのやぐらのおしおきべやも、コンクリート棟の食堂やシャワーも、そしてずっと寝起きしてご褒美もらったこの厩も、もうお別れなんだ。
「めそめそ」
「あれ? モトコどうしました? 気分をわるくさせてしまいましたか? でもこのおおさわぎもあと少しでおわりです。祖父が満足したらなんとかおうちにもどれるようにしますから、それまでつきあってください」
「……はい……わああーーーん」
アームザックの腕ではサラにしがみつけないので、胸をおもいきり押し付けて泣いた。
鼻輪に鼻水と涙が絡みながら落ちてゆく。
「モトコ、モトコ、どうしたんですか」
サラはあたまをなでて慰めてくれたが、私のないているわけはわからないようだった。
