人間万事塞翁がポニーガール
【ポニーガール】
四肢伸展のまま放置された状態で厩の中に朝日が差し込んでいた。
「ああ……」
拘束の軋みのあるまどろみの中に蘇る、快感の余韻がきもちいい。
ごんなギシギシのまま寝たなんて信じられない。
意識がはっきりしてくると、真っ先にお尻の穴の辛さが全神経を支配した。
「うくっ……」
苦しさにガチャガチャ体をひねっていたらサラが来た。
もう憎むべき相手ではなかったが、それでもおじいちゃんへの復讐の話はちゃんと思い出した。
お股を見下ろすと、貞操帯を嵌められた性器は小さな穴のあいた追加カバーで覆われていた。
「おはようございます」
「……おはよう……ございます」
喋っただけでお尻に響く気がした。
「気持ち良かったですか?」
「はい……」
「装置はすべて昨晩のままですから、不意の突き上げに注意してください」
「あの、おしり、なんとかなりませんか?」
「それがいちばん早くて楽な方法なので我慢してください。シャワー浴びて、朝食とって、今日は貞操帯以外の拘束はしませんからゆっくり体を休めてください」
「はい」
やっと手足の鎖を外してもらい、貞操帯だけの裸に、最初に着せられたのと同じ貫頭衣を着た。
きついお尻を気にしながらサラといっしょにコンクリート棟へ入り、おしっこだけ貞操帯の穴越しに出して、シャワーを浴びた。
肩のきずはとっくに治っていて、髪の毛まで全部洗った。
更衣室の隅には私の馬具が手入れされて置いてあった。
食堂で丸椅子に座るとお尻と子宮が突き上げられた。
「あふん!」
「オウ、いいこえです」
「この子宮のゴム、なんか嫌です。いつも淫らになりそうで」
「それでいいんです。そういうポニーになるんです」
「ああ」
気持ちを受け容れたとたん、子宮がキュウウと刺激されてたまらなくなった。
「服従するきもちよさ、わかってきました?」
私は潤んだ目でサラを見上げた。
いろいろなことがだんだんどうでもよくなって、いわれるままにしているとこんなにきもちいいなんて最高だった。
「はい……」
すでに朝食のプレートはテーブルの上にあり、クロワッサンとハムとチーズとサラダとカフェオレだった。
「なんか、へんですね。普通にしてても淫らって」
サラはにっこり笑うだけで具体的な返答はしなかった。
厩に戻ると、貞操帯以外なんの拘束具も無いのがとても物足りなく感じて変だった。
藁の寝床の形を整えて、TV見る時のような姿勢で寝そべると、勝手に自分の乳首をいじりはじめてしまった。
貞操帯の股間は完全に封印されているので、自分ではいじれない。
お尻の辛さはまだ慣れない。
ゴロゴロしてみてもどうにも間が持たない。
いつかみたいに走ってみるか。
幸い足枷など一切ないので、好きなだけ走れるはず。
でもどうせ走るなら、ポニーのほうが効率的だ。
また明日から調教されるみたいだし。
そこまで考えついたところで、心臓がキュッと切なくなって、じわっとお股が温かくなった。
事務的にサラに従い、あれだけ嫌々着込んだポニースーツが今猛烈に着たくなっている。
あのつま先立ちのブーツの拘束感がたまらなく欲しい。
きつくて動きにくいコルセットの息苦しさがなつかしい。
このお尻の拡張のまま、自分がポニー姿で疾走するところを想像し、顔から手から腰から足から、さらに肛門や子宮までぎゅうぎゅうにされたまま命令を聞くという状況に激しい興奮を覚えてしまった。
「はふっ、はふっ」
私は何かに取りつかれたように荒い呼吸を繰り返しながらコンクリート棟の更衣室に向かった。
さっき見た時のまま、そこに馬具があった。
少し形が違うものもあり、部品の数も増えていた。
「はふっ、はふっ」
私は息が荒くなっていて思考がぜんぜんおかしい。
まずブーツが目についたが、脳の一部が妙に醒めていて、最初は首輪だったことを思い出した。
自分の手にとってみると、構造が良くわかる。
外側にはデザインを損なわないよう黒いプレートの奥に警告LEDや赤外線受光部が埋め込まれ、裏側にはうなじの部分に電撃の電極がついていた。
丁寧な縫いとりのある豪華な革製の首輪だが、最初の時と明らかに違うことがある。
それは鍵の金具の脇に真新しい金のプレートが打ち付けてあり、秀麗な筆記体で"Motoko.M"と綴ってあった。
早速首に巻こうとしてフッと手を止めた。
それを自ら嵌めることがどういうことなのか、いちおうまだ判断能力はあるつもりだった。
ドッドッと高鳴る胸の音が耳の中に響き、自分がおじいちゃんへの復讐の道具になるけどいいのかと自問自答する。
引き換えに手にはいる快楽も天秤にのせる。
どうする。
…………
……ごめん、おじいちゃん。
……私、もう死んでるの。
プレートの向きや電極の位置から首輪の方向を考え、張り裂けそうな興奮の中で自らの首に嵌めてカチリと施錠した。
激しい興奮の高みに全身を貫かれ、辛うじて手をついてコンクリートの床にしりもちをついた。
「はふっ、はふっ」
私、ああ、首輪、あああ、きもちいい。
貫頭衣を脱ぎ捨て、コルセットを手に取るが、さらに複雑になっていてよくわからない。
とりあえずあとまわしだ。
ブーツは独立した部品なので先に履いてしまおう。
興奮でフラフラしながらブーツをシャワー室の前に置いてシャワー室に入り、裸足で汚れていた足を良く洗う 。
タオルで良く拭き上げてから馴染んだブーツを履いた。
「はふっ、はふっ」
あんなにバカげていると思っていたこのポニーブーツの拘束感もシルエットもたまらなくきもちいい。
私の足に、ああ、蹄が…… ああ……
私、ポニーにされるんだ。
これを脱ぐときは、また責任としがらみの渦巻く、人間に戻るとき。
ずっとポニーでいたいよ。
「はふっ、はふっ」
首輪に貞操帯にブーツという姿で、もうこれ以上は自分では出来ないことに気付いてつっ立ったままじんわり涙ぐんだ。
他に出来ることないか、見たこともない部品をつまみ上げたりしてみた。
これがグローブなのかな?
細長い三角形で、片手分しかないみたい。
こっちの箱は何だろう。
まるで宝石でも入っていそうな30cm四方ほどの革張りの箱。
ミシリと開くと指輪の陳列ケースのように、金のC字型をしたリングが3つと棒状の金具が1つ、金の部品が数点、美しく並べられて入っていた。
C字リングの一つは太くて大きく、一部が蝶番のように開いていて、閉じると直径4cmほどの完全なO形リングになる様子だった。
他の2つのリングは直径2cm程で、切り欠きに嵌まるような部品は見当たらない。
あとは、ミニサイズの金のバーベルだが、これは用法が見当もつかない。
他に特徴的なのは直径5mmほどの金の球が2こで、短い鎖で金のプレートが繋がっており、1枚のプレートには"Pony: Motoko Misukumi"、もう1枚には"Owner: Robert.M.Wilkinson'と彫ってあった。
これってサラのおじいさん?
オーナーってやっぱりそうなるんだ。
サラに負けてサラに支配される幸せに浸るつもりだったのに、サラも立場上は調教師でしかなく、私はポニーとして物のように取り引きされるんだ。
寂しくて嫌な気持ちがするのに、物扱いされる自虐的興奮でケースを持つ手が震えた。
他に何か無いか探すため、その高級ケースを閉じたところで後ろから声がした。
「モトコ! ここにいたんですか。何してますか?」
「キャーーーーーッ!!」
ポニー衣装にふらふら引き寄せられたことを知られた羞恥と、勝手に身につけてしまって怒られると思った私は悲鳴を上げた。
「ごめんなさい、勝手に着てしまって」
「ああ、モトコ、自分から着たくなったんですね」
そう言われて私は耳が焼けちぎれるかと思うほど真っ赤になった。
ちろっと視線を外し、今度は反対にちろっと視線を外し、サラを直視できないまま頷いた。
「はい……」
「休んでなんかいられないほど?」
「はふっ、はふっ、はふっ、いじわる、いわないで下さい」
「オウごめんなさい、うれしくてついしつこく確認してしまいました。ではお手伝いします」
サラは早速私の上半身にポニー用コルセットを着せるとベルトを締め上げた。
「ぐふっ!これはきつい」
「締めてるうちに馴染んできますよ。じっさいこのまえより1コマ強めです」
以前との形の違いは何本かのストラップで厚手の革パンツが付いていることだった。
サラは先に首輪とコルセットのストラップを繋いでしめ、上半身を仕上げた。
革パンツは貞操帯カバーとでも言うべきもので、金属の貞操帯を美しい黒革のカーブで覆い、お股をほこりや泥から守るものだった。
お尻の方には穴あり、ここからしっぽを出すのだろう。
パンツのサイドのベルトを締め、ストラップでコルセットとの連結をきっちり締め上げると、体幹の拘束感が充実して気持ち良く、また動きやすくもなった。
「おっぱいといおへそはまるみえのままなんですね」
「それがいいのです。でも胸については最後にカバーが必要になりますので、一応カバーも用意しました」
「カバー早めにください」
「それは無理です。カバーは公道用なのです。さすがに叱られるので」
「そうなんですか。ならば仕方ありません」
サラの説明の意味が全くわからなかったが、興奮している私は深く考えずに聞き流してしまった。
「腕はこれです」
さっき見た片腕のグローブだ。
「片方しかないみたいですよ?」
「これに両腕入れるのです」
「ええ?」
そう言うとサラはその細長い三角の革の袋についているストラップを私の肩にたすき状に回し、仮留めのテンションで締めた。
「モトコならきっと病みつきになりますよ。腕を失ったと錯覚するほどの厳しい拘束です。しかも胸を張る姿勢を強要されますから、ポニーの姿勢の美しさにも効果大です」
手を背中に回され、後ろ向きに拝んでいるように手のひらを合わされた。
そこに革の先端を被せられ、内部で手がぴったり合わされ、手首が締められる。
この段階で既に自由を奪われているが、それは全くの入り口に過ぎなかった。
カチャカチャと金具の音がするたびに腕が肩に向かって包まれて行く。
ぼんやり被せられただけのような気がしていたら、シュルシュルと紐を繰る音がして手首から腕、腕から肩へと締め上げられた。
「ぎえー! しめすぎですよ。肘がくっついちゃう」
「くっつけようとしているのです。もっと寄せて」
「そんな無理いいい」
サラは容赦なく手首から再度紐を締め直してゆき、とうとう私の左右の腕は背中で下向きにゆるやかにくの字に曲がった1本の棒にされてしまった。
肩甲骨は左右くっつきそうなほど寄り、胸は不自然なほど張った状態になった。
そのいびつに寄った肩の位置に合わせて肩ベルトを更に締め上げられ、二の腕の余裕部分も背中に押し付けられた。
まだ背中で金具がチャラチャラ鳴っている。
肩越しに見てぎょっとした。
あれだけ厳重に締めた上に更にベルトでも締める構造になっている。
すでに腕の感覚は無く、背中で棒状に固まったパーツと化していたが、それが5箇所ほどミシミシと増し締めされてもっと存在が希薄になってしまった。
グーのミトンを後ろ手にしたのとは次元が違う、ポニーとして仕立てられ二度と手の出番がないことを思い知らされる拘束だった。
「はふっ、はふっ、ああ、手がなくなっちゃう……」
「モトコ、興奮してますね。文字通り飴と鞭、昼間一日頑張ったら夜にはまたかわいくイカせてあげます」
「ああ……」
私は自分がこんなに簡単に欲情する人間だとは知らなかった。
ニンジンぶら下げられただけで俄然やる気になっている。
「キスしてもいいですか、モトコ」
私は無言で頷いた。
サラは少し屈んで私の唇に自分の唇を重ねた。
クチュクチュと唾液の交換をしたあとは、未熟な私はサラ任せ。
自在に舐めとられ、吸い出され、どろりと飲まされる。
「ぷあっ、はふっ、はふっ」
「では轡のハーネスを嵌めます。しばらくおしゃべりはお預けです」
「はい」
最初の時のように置いてあった椅子に腰かけた。
サラの唾液の余韻の上から轡を噛み込まされ、髪をアップにまとめられ、ヘッドハーネスを締め込まれた。
「ハフ」
「あはは、これだけ顔面拘束されていても、最初の時よりモトコがいい顔しているのがよくわかるの、不思議ですね」
わたしは照れて俯いた。
「俯いてはだめですよ。首のプレートを是非誇らしげに見せてください。そのうち胸や性器にもプレート付けますからね」
「フヒ?」
「さっき見ていたじゃないですか。そのケースに乳首のピアスとクリトリス用のバーベルピアス、それに鼻輪が入っていたでしょう」
「フヒ?!!」
私は目を剥いて怯えた。
クリトリス用? 乳首ピアスって? それに鼻輪って? そんなばかな!
「怯える顔も以前より何倍も可愛いです、モトコ」
サラは震えて涙を浮かべる私を後ろから抱き、私の剥き出しの乳首に指先で触れた。
「ああ、モトコの気持ち、私にもわかります。未知のものに対する恐怖と、それをも無条件で受け容れなければならない身分に堕ちた惨めさ。でも惨めなだけじゃなくてそれに従う快感や、そしてその未知の責め具がもたらすかもしれない快感への期待……。このどうしようもない痺れるような不安と快感をたっぷり味わって下さい。だって、それが欲しくて自分で首輪嵌めたのでしょう? おじいさんへの復讐の道具になると知ってて」
「フヤァァァーー!!」
ねっとり甘い煽り言葉とともに乳首をつままれると、その切ない快感がおじちゃんを売って自ら堕ちた弱い自分を蒸し返させ、気が狂いそうな慙愧の念と、その何倍もの背徳の快感が私の脳に渦巻いた。
膣が収縮し、子宮口がゴム球で突き上げられ、ギチギチに拡張されたアナルが絶頂のトリガーとなる。
「ンーー!!」
「すごくきもちいでしょうモトコ。でもそれだけではイケないのです。微妙に足りないはずです。ココの刺激が」
サラの指先が馬具の革パンツの股の部分をコンコンとつつく。
「ンヒー! ンヒー! ヒハヘヘフハハイ! ヒハヘヘ! ヒハヘヘ!!」
私は目を剥いて『いかせて』と哀願を繰り返すが、サラは両乳首を弄ぶだけで、私の肩に顔を載せにこにこ笑っている。
「いまイッたらもったいないですよ。言ったじゃないですか、夜には可愛がるって。だから、それまでは我慢して訓練です」
私は涙を流しながらこのやるせない気分を夜に繋ぐ決心をした。
「ハヒ」
「いい子ですね。じゃあ馬場に行きましょう」
とことん堕とされた私は、完全に性の快楽で支配されるようになってしまった。
ピアスや鼻輪の装着まで宣言されたのに、よい子に調教されて夜に御褒美をもらえるウキウキした気分になるようにサラに操られてしまっている。
当然失敗すればおしおきだろうから、頑張っていい子になろう。
以前と同じように手綱をつけられて馬場へ出る。
「もう動きそのものには慣れたと思うので納屋から馬車を出すところからちゃんとやりましょう」
納屋はコンクリート棟の一部で昔はガレージだったと思われる所だ。
今の私の厩こそが昔は納屋だったのではないだろうか。
雑然と新旧の物が入り交じって散らばる中に私の馬車が置いてあった。
座席の上には新しい形のハーネスが置いてあった。
基本的な形は前のX字のものと同じだが、あれだと手を通さないと装着出来ないので、これはアームザックごと締めるようだった。
強度に一抹の不安を覚えたが、前向きに引っ張るかぎり支える場所は同じなので、強度も前のものと同じはずだ。
それよりも腕ごと完全に背中に一体化され、ますます腕の喪失感が強調されそうだ。
一旦手綱を外され、頭から被るようにして前のXの交点が胸の中央に来るようにし、腰で前後左右を締められた。
腰で馬車に繋がれ、手綱が戻され、サラが座席に座って手綱をピシリとやった。
「最初はゆっくりでいいです。脚を傷めないように。馬場に出たらハイステップでゆっくり回って下さい」
グッと踏み込んで発進、すぐにスピードが乗る。
おっと、焦ってはだめだ、競争ではないんだっけ。
馬場に入りトラックを周回する。
轡を貫く金属棒がピクリと引かれて唇が引っ張られ旋回指示、曲がり足りない時はさらに引かれるので従う。
直線になると左右均等に戻る。
ああ、命令っていいな。
ピシリと手綱が鳴って再加速、もうハイステップでもかなりのスピードが出るようになった。
走りながら緊張が一段落したら、子宮の突き上げとアナルの拡張感がパアッと快感を与えてきた。
ずっとお尻から気が逸れていたので、とうとう馴染みはじめたらしい。
強烈に締めていた力が緩み、直径均一で筒に近いフォルムのアナルディルドーは、潤滑液の作用で緩みが生じ、走る振動と私の体の動きで微妙に出入りするようになった。
イボイボもヒダヒダも無い円柱形のディルドーだけど、出入り時のアナルの刺激がたまらなくきもちいい。
「ハフッ、ハフッ、ハフッ」
ひょっとして、膣のゴム球もアナルのしっぽも、私が走ることで気持ち良くなる仕掛け?
ひょっとして、このあと私、夜サラにご褒美もらうまで、ずっとずっとこの中途半端な快感漬けにされっぱなし?
「フヒャアア!!」
揺れる自分の胸の乳首を見下ろすと、キリキリと痛いほど尖っていた。
