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  マゾ。  







§§ マゾ。 §§

 またコンクリートの上で目が覚めた。
 周囲の状況は何も変化していない。

 でも、目が覚めた時に大きな意識の変化に気が付いた。
 今嵌められている首輪と手枷足枷の存在を、大きく意識したのだ。
 鎖に繋がれっぱなしで生活することの快感。
 それは大きな安堵感。
 管理されていることで、自分の存在を再確認できる。
 自由を奪われていても、与えてもらう快感がある。

 ついさっきまでは拘束の嫌悪感を感じていたのに、この程度の自由のある拘束なら、一生でもいいと思えるようになってしまった。

 仰向けのまま、天井に向けて手を突き出して、手枷同士を繋げている鎖をビインビインと引っ張って見る。
 足もわざと開いて、30cm程度でガキンと引き戻される感じを確かめる。
 ブチュッと股間が蜜を吐く。

 私、バカだ。
 どんどんおじさまの策にハマってる。
 ううん、でもまだ全然後戻りできるところにいる。
 だって、『策にハマってる』って客観的に考えることができるもん。
 きもちいいことだけ楽しんで、最後に『イヤです!』って毅然と言ってみせる。
 そして、どういう方法でかはまだ想像すらできないけど、えーい!っておじさまをやっつけちゃって、おうちに帰るんだ。
 おうちに帰っても、この手枷や足枷着けたままでいいかな。
 ううん、さすがにそれじゃお父さんたちが私がヘンになったって心配するから、絽以にでも預かってもらって、時々嵌めてみよっと。
 あ、絽以には何て言おう。
 絽以に言うべきかな。
 絽以も目覚めちゃったりして。
 『珠里は僕だけのペットだよ。こんな淫らな珠里を見ていいのは僕だけだ。身動きできないのを見られて感じるなんて、珠里はすごいマゾなんだね』なーんて。

 ―― ゾクゾクゾクゾクゾクゾク!! ――
 あああーん、きもちいい!

 ああでもアナムネへ帰らないといけないんだっけ。
 いきなりあたしみたいな王女が帰って来て、みんな納得してくれるだろうか。
 楽しいこちらの世界で楽しく過ごして来た私なんか、きっと嫌われるに決まってる。
『おまえがのんびり楽しく暮らしているあいだ、我々は大変な苦労を強いられてきたんだ。今更戻って来てどうするつもりだ』
『そうだそうだ! これから毎日、俺達の幸せのために働け!』
『も、もちろん、そのつもりです!』
『口先だけで言ってもわかるものか! あの檻に閉じ込めてキリキリ働かせろ!』
『逃げられないように皆に見えるところに置いておけ!』

 ―― ゾクゾクゾクゾクゾクゾク!! ――
 け、結局、お父さん達と帰っても、みんなに吊るし上げられるだけかも〜

 あれを全部身に着けさせられて、衆人環視の中、檻に繋がれて一生を暮らすんだ〜

 きもちいい!

 きもちいい!

 きもちいい!
 きもちいい!
 きもちいい!

 お○んこいじる指が止まんない!

 マゾ。

 晒し者。

 檻。

 あたまがグルグルしてバカになる。
 おっと!
 でも、今だけよ。
 今、きもちいい分だけ。
 大丈夫。
 洗脳なんてされてない。
 私はまだ平気。
 だってこんなに客観的に状況を把握してるんだもん。
 今だけよ。
 今だけの気持ち良さだから。
 イッっていいよね。
 きっとアナムネに戻っても不幸だよ。
 今たくさん気持ち良くなっておけば、アナムネでも皆のために働ける。

 ドロドロの思考の中で、慣れて来た指遣いでどんどん昇り詰めて行く。

「アッ! アッアッアッアッアッアアアアアアッ!!」
「ッくぅーーーーーーーーッ!!」
 ぎゅぎゅーんと引き付けて、激しくイッた。

 さっきまで心の中心にわだかまっていた、性をむさぼる事への嫌悪感はとっくに消えていた。



§§ オナニーざんまい §§

 余韻のまどろみの中、お腹が空いて来た。
 与えられたカロリー食品をかじり、ペットボトルの水を飲む。
 眠いから、また寝る。

 しばらくして起きて、することもないからまたオナニー。

 お腹が減ったのでまたかじる。

 かじりながらおま○んこクチュクチュいじるようになっちゃった。
 だって、あとで禁止されちゃうんでしょ?
 いま、いじりまくっておかないとぜったいこうかいする。

 クチュクチュ。

 クチュクチュ。

 クチュクチュ。

 アハッ! きもちいい!

 私、すこし奥手すぎたよね。
 こんなことなら、絽以ともっとエッチなことしておくんだった。
 キスどまりかぁ……

 あ、そうだ……
 お尻って、もう元に戻ったかな?

 手枷同士が繋がれているので、お尻の穴を触ることができない。
 あ、でもこの長さがあれば、足を通して…… お尻を…… うんしょ…… できた!
 セルフ後ろ手!
 これならお尻の穴がチェックできる。

 そっとお尻の穴に触れて見る……
 ひゃ! ……?
 あ、平気かも。
 そーっと押すと……
 アヒッ!!
 指が入っちゃった!
 抵抗も無く入っちゃった!
 そして痺れるような電撃的快感……

 いやああ!
 やっぱり拡がっちゃった!
 すんなり指が入るなんて!
 ……
 でも…… でも、きもちいい!
 お尻、凄まじくきもちいい!!
 指が止まらない。
 まだローションの一部が内側に残っていたのか、抵抗無くヌルヌルと出し入れできる。

 一差し入れると、普段と逆方向に肛門がこすられる、背徳的な逆流の快感。

 それを引き抜くと、普段どおりに排泄する、開放的快感。

 入れる!

 引き抜く!

 入れる!

 引き抜く!

 入れる!
 抜く!

 入れる!
 抜く!

 動作を繰り返しながら、ちょっと穴の筋肉を締めたら……
 キャアアアアッ!!
 脳がとろける快感ッ!!

 アハッ!

 アハッ!

 アハッ!

 おしりきもちいいいいい!
 おしり最高!

 どうして誰も教えてくれなかったのよぉ!
 こんな快感!


 あーー

 あーー

 うーーー

 クリトリス同時にいじったら最高にきもちいいだろうなぁ……

 あー! 手枷邪魔ッ!

 何か突っ込むもの突っ込むもの……

 歯ブラシしか無い……

 だめだ、完全に頭がバカになってる。
 後ろ手のまま歯ブラシを掴み、柄の部分をお尻の穴に当てた。

 本気?

 自問自答したけど、結局快感の勝ち。
 軽く先端を押し込んで見たら、怖いほど簡単に中に入った。

 そのまま押し込むと、内側の粘膜がひっつれる感じがして痛い。
 少し戻して、もう一度押すと、粘り気が馴染んだのか、スルッと入った。
 今度は括約筋の位置で引っ掛かる。
 さんざん慣らされたので、出すように緩めると、抵抗無く奥まで入り、同時にビリビリ痺れるような激しい快感が走った。

 そのままそーっと手を離し、手枷の鎖をお尻から前に足を潜らせ、また前手錠にもどした。
 つーっと抜けそうになる歯ブラシを、必死でお尻を締めて止める。
 自分のお股を上から見ると、子供のようにツルツルのソコの真ん中に、真っ赤な木の芽が顔を除かせてピカッと光っていた。
 こ、こんなに飛び出たの、自分で見たこと無い!
 自分で自分のアソコの構造すらあやふやにしか知らないので、自分に未知の器官が新たにくっついたような違和感を覚える。

 こ、ここにも…… ピアスをぶら下げられちゃうんだ……
 もちろん、ぶら下げるためには、文字通りピアッシングされるわけで……
 穴を…… 穿たれちゃう…… わけで……

 ハアッ……

 目の前で、クリトリスは見る見る硬さを増し、長ささえ伸びたような気がする。
 左右の内股には新たに吐き出された粘液が、ゆっくり這い伝う不快感が下りて行く。

 お尻の歯ブラシが落ちないうちに、前手枷の指でコチコチの突起をキュッとつまむ。
「グギイッ!!」
 ババババババッっと目の前が真っ白になり、体が弓なりにのけぞった。
 いきなりつまむのは強すぎた!と思った時にはカクンと力が抜け、右肩をしこたまコンクリートの床にぶつけて倒れ込んだ。



§§ ブーツ §§

「うひゃーーーッ!」

 ???

 妙な叫び声で目が覚めた。
 ニヤニヤ笑いが途中で引きつったような、妙な表情をしたユックさんが見下ろしていた。
「あ、ユックさん」
「ひ! 姫様、それッ!」
「えー?」
 寝ぼけ眼で呑気に返事をした私は、ユックさんの指さす方向を見て顔面蒼白になった。
 お尻に歯ブラシが刺さったまま。
「キャーーーーーーッ!! こっ、これッ! ちがッ!!」
 言ったとたん、どう圧力が作用したのか、恥ずかしい音を立ててプリュッと歯ブラシが押し出された。
「いやああぁっ!」
 唇と頬の色の境目がわからなくなるほど赤面する私。
 ユックさんの反応が怖くて顔を見られない。

「姫様……」
 妙にトーンが低いので、驚いて顔を見ると、目に一杯涙を溜めて泣いていた。
「え?」
「いめざまぁ…… うれじいでずうぅ……」
「ちょ、ちょとユックさん……」
 急に何もかも醒めて、手枷足枷のまま首輪の鎖の範囲で立ち上がり、ユックさんの肩を抱いた。
「グシグシ…… 姫様、やっと気持ち良いことがわかられたんですね…… いままでオクテ過ぎて不憫でで不憫で…… もっともっときもちいいことたくさんありますからね…… いっぱいいっぱい試しましょうね…… グシ……」
「う、うん、わかったから、泣かないでくださいよ」
「グシッ…… エヘ、ほんとですかぁあ?! やった! お外行きましょう、お外! きもちいいですよぉ!」

 わ、私、とんでもないこと言っちゃった?

「ひ! い! 遠慮しときますゥ!」
「中ばっかりだと体に良くないですよー! えーと? あ、裸だから嫌なんですかー?」
「ま、まぁ、それもあります」
「んー、じゃぁ、特別にブーツとサングラスではーッ!?」
「あ、あの、水着とかパンツとかは無いんですか?」
「だーって、気持ち良くなるのに邪魔でしょぉぉ?」
「じゃ、と、とりあえず、それお願いします」
「はーい!」
 ユックさんはガラスケースの奥から巷で良く見かけるシンプルなデザインの革ブーツを出してきた。
「エヘヘ、姫様の奴隷衣装のなかで、これだけ新品なのでーす!」
「はぁ……」
「これは足枷があると履けませんから、一度外しますねー!」
 ユックさんは私の足元に屈むと鍵束を取り出し、私の足枷を鎖ごと外した。

「姫様、そこのシャワースペースへ」
「はい」
 足だけきれいに洗ってもらい、タオルでよく拭いてもらってからブーツに足を入れた。
 私はブーツどころかこんなにヒールの高い靴は初めてだ。
 足を差し入れた時のヌチッとした感じが馴染めなくてちょっと気持ち悪い。
「素足でいんですか? ブーツ用のソックスとか履かなくて」
 一応コマーシャルでの知識はある。
「あははは! 姫様自分で脱いだり履いたりできないですから、足のニオイなんて関係ないでーす!」
「そ、そうですか……」
 片方に完全に足を入れ、サイドのジッパーを上げてもらうとふくらはぎがキツい。
「あー! 姫様、ちょっと太ーーィ」
 恥ずかしさで真っ赤になった。
「首輪や手枷足枷は、今着けてもらってるのはちょーきょー用で、そこのケースに本物がありますけど、ブーツはこれが正式なものですから慣れてくださいねー? しばらく履きっぱなしにしなしょうねー!」
「い、嫌っ……!」
「アッハッハ! 慣れですよ、慣れ! これに合うちょーきょー用の足枷は無いので、枷も本物をつかいかましょーか」
 ユックさんはガラスケースの中の、3対の大きな輪のうち、一番大きな一組を取り出すと、ケースの中にあった鍵束のうちのひとつを使って解錠した。

「うわぁ、さすがに本物はちがうなー! 重さも、装飾も、すばらしいものですよー?」
 私の足元に戻り、1つをタオルの上に置き、もう一つをブーツの上から私の足首に嵌めた。
 ―― カチリ ――
 鍵は内蔵されているのか、輪を閉じただけで施錠されたような音がした。
「こっちもー」
 反対の足にも取り付けられた。
「鎖も金の鎖があるのですが、それは正装用なのでこっちで我慢してくださいねー?」
 ユックさんは私の革の足枷を繋いでいた鎖を南京錠を解錠して外すと、それをそのまま今着けられた金の足枷に移した。
 ただでさえすごい高さの慣れないヒールでフラフラしているのに、ブーツの足首同士を繋がれ、一層歩きにくくなった。

「こ、このヒールって何センチあるんですか?」
「んーと、12センチだったかな? 姫様が慣れないと申し訳ないだろうって、ニルちゃんと低めの選んだんですよー!」
「じゅっ! 12センチ?! い、いまユックさんが履いてるのもそれくらいですか?」
「んーと、これは10センチですゥ。いろいろ作業しないといけないので、動き易いようにって、低め」
「そ、それより高いんですかぁ?」
「だーかーらー、姫様なんでも慣れですってばぁ!」
「ひいぃぃぃ……」
「さ、お外行きますよー!」
「いやああ! 歩けないィ! 歩けないですゥ!」
「あっはっは! んなバカな。 だって、たかが靴ですよォ?」
「うう……」
 ユックさんは笑いながら床の金具から首輪の鎖の端を外し、少しテンションをかけて扉の方に引っ張った。
「はやくぅ」
「うう、ちょっ…… あ!」
 素っ裸に革の首輪、手枷、そしてやたらヒールの高いブーツを履かされ、それを金の足枷で固定され、繋がれている私。
 ガクッ、ガクッ、ジャラッ、ジャラッと、金属音を響かせながらコンクリートの床をベランダへ続く扉に向かって歩く。

「姫様ぁ! 腰が引け過ぎですゥ! 猫背ダメだって言われたでしょー?!」
「す、すみません……」
 て言っても、一時的に腰を前へ突き出すだけで、次の一歩はすぐに腰が引けてしまう。
「あーもう! 姫様カッコ悪すぎぃ! これは練習しないとダメですねーッ?」
「え?」





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