渇望調教

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 控え室には誰も居なかった。

 勝手口から外に出てそこらの茂みでしちゃうのが普通だけど、この姿では誰かに見られたらまずいかもしれないので、ちょっと探しておまるを引っ張り出した。

 屈んで跨ぐ。

 え?
 え?
 え?

 脱げない!
 これ、脱げないよ!

 股を捲ろうとする指が弾かれる!

 出せないとわかったら急に焦ってきた。
 そしたら今のあたしの姿勢で何かを感じとったのか、急にお股の触手がモゾモゾと蠢いた。

「や! あ! あ?」

 おしっこ出る場所の辺りに、ツーンと違和感を感じた。
 あ、おしっこ出ちゃった?
 いや!
 出てない!
 逆に入ってくる!
 何か入ってくる!

 ピリピリ、ゴロゴロ、生まれて初めての違和感だ。
 目玉をベロでねぶられるとこんな感じなのかな。
 おしっこする時のスーッと解放される水流の快感が、無理に増幅されて押し込まれて来る感じ。
 僅かだと心地よい刺激も、大量だと毒に感じる。
 一舐め絶品のノルマンディーの塩を、壷いっぱい呑まされる感じ。

 尖った快感のチリチリが奥まで達したら、ストンと楽になった。

 そしたら、この肉の服を脱いでもいないのに、ジョジョジョーっとおまるに黄色い液が溜まり始めた。

 あれ? おしっこ出てる。

 でも出てる最中の放尿の快感がまるでなくて、下腹部だけが勝手に急速に楽になってる。
 なんだかおしっこの儀式をすっとばして膀胱の中身だけを捨ててる感じ。

 でも出たから良かった。

 どこで何がどうなってるのかわからないけど、終わったらもう垂れなくなった。
 そのままチャンバーポット(おまる)を持って勝手口から出て、茂みの裏に撒いて捨てた。

 おしっこ出したらおしっこ穴の違和感は二度と元に戻らなくなった。
 これって……
 嵌めた首輪が外れなくなったみたく、もうおしっこ穴から抜けなくなったの?

 ミミズみたいな触手でおしっこ穴に栓をされた図が急に頭に浮かび、気色悪さとともに後戻り出来ない感じに襲われ、顔面蒼白になった。
 その危機感を押しつぶすように仕事に戻ろうと思い、さっきの2階へ戻った。


 *****


 次の部屋に入る。

 おしっこ穴の違和感は強烈でまだ慣れない。
 さっきの続きを期待するとかいう感覚はもうあまり無く、ほぼ仕事だけの気分でハタキを使い始めた。

「はあンッ!!!」

 そしたらいきなり来た!
 昨晩のミトコンドロイドおじさまのおちんちんや、マーサとのやりとりや、お仕置きとしてこの肉の服を着せられてることも忘れ、期待にドクドクと心臓の鼓動が跳ね上がる。

「ハアッ…… ハアッ……」

 うあ!
 全部いっぺんに来た!
 靴の中のつま先から、手の指先、指の股、くるぶし、ふくらはぎ、ふともも、今度はビスチエ部分以外のメイド服にすり替わってる肩や、首筋にまで細い触手でサワサワと文字通り愛撫をしてくる。
 あんな湿っぽそうな材質のくせに、どうやってこの軽いタッチを出してるのだろう。
 神経がざわつく程のねぶるような愛撫から、繊細な刷毛でなぞる愛撫まで、ネオンのように一連に、そしてまたあちこちと散発的に。
 口の中に唾液が溢れ、またお腹の奥の奥がキュウウンと切なくなった。

「ああ……」

 ハタキを握り締めたまま、それを杖のように突いてみるけど敵(かな)わず、ドサリと客間に横倒しになった。
 明るく開け放たれた窓からそよかぜが吹き込んでるけど、今のあたしには周囲の風情を楽しむ余裕なんて無かった。
 日常の風景の中で、ただあたしだけが密かに嬲られ、高められている。

 脱げない肉衣装に全身をくまなく嬲られ、性感がどんどん高まってゆく。
 知識皆無のあたしでも、出口がきっとあるってわかってる。

 おっぱいと股間の切なさが極限に達し、思わず自分の手で掴む。
 そして焦った。

「あ!! あああ?!!」

 自分で弄ろうとした感触が、全く伝わらない!
 うそよ!
 ここ、つまめばもっときもちいいはずなのに!
 なんで?
 なんでグニッって弾かれるの?

 左手をメイド服のスカートの裾から股間に差し入れ、右手で乳首のあたりをつねってるのに、全然伝わらない!

 支配されてる?
 なにもかもこの肉の服に、あたし支配されてるの?

 急に被虐の快感がドロリと心の闇に染み込んだ。

 その気持ちを掴んだかのように、ピュルピュルと細い触手が服の下から現れ、ビシィと二の腕や太もも、足に絡みつく。
 よく見るとソックスは左右が融合しはじめ、足の自由を奪ってゆく。
 グローブも背中で肘同士がくっつくほど撚り合わされ、ミチミチと音を立てて融合を始める音が聞こえた。

「ひ! ふぐッ!! ッムー……!!」

 思わず上げそうになった悲鳴は、首回りから溢れ出た触手の塊に封じられ、その塊は大きなボール状になって口腔内を占領し、口をギッチリ覆うマスクと一体となって完全にあたしの言葉を奪った。

 高められ、感じさせられ、でも自ら弄る自由は剥奪され、拘束され、封じられ、さらに全身を新たにサワサワと愛撫される。

「ンムーーーーー!!」

 イクことも戻ることも出来ない姿で、見開いた両目からハラハラと涙を流し、心の底から哀願した。

 助けてください。
 どうにかしてください。
 出口をください。






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