処刑開始

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「起きろ」
 私をここへ連れて来た兵士だ。
 今はことば遣いが違う。
「予め断っておくが、刑の妨げになるので食事は無い。よいか」
「はい」
 牢の壁の鎖から、また手鎖へと首輪を繋ぎ替えられ、手にはまた木製の手枷を嵌められて牢から連れ出された。
 牢の外には更に数人の兵士が居て、周囲を囲まれるようにして地上に上がり、あのピロリーで晒された中庭の露台へと向かった。
「あの…… おトイレ……」
「不要だ。すぐわかる」

 考えてみればこれから人前でお尻にモノ突っ込まれるんだった。
 そん時、どうせ一緒に小も出ちゃうだろうし。
 ……えーと? 人前で?!

「い、いやああああ!!」
「どうした!」
「あのっ、あのっ、やっぱやめます!」
「ハァ? 何を言っている」
「だから、そのコロンなんとかっての!」
「コロム刑か」
「それ!」
「無理だ。私は執行の手伝いをするだけで、刑の中止の権限など無い」
「そんなぁ!」

 取り乱してしまったが、落ち着いて考えればもう全て手遅れなのだった。
 えーと、今まで衆人環視の中での排泄ってあったっけか……
 最初におじさまの所で調教された時から、他人に見られながらの排泄はあった。
 儀式で生き埋めにされた時は衆人環視の中で排泄したけど、おしっこだけを埋まったまま人しれず土の中に漏らしただけだから。
 あからさまに人々に見られながらって……

 ……ああそうだ。
 あの小さな檻に詰め込まれて、絽以に付き添われて、お城の高い所からお漏らししたっけ。
 でも排便まではさすがに大勢には見せてないよ。

 やっぱダメだなぁ、私。
 もうちょっと良く脳内でシュミレーションしてから頼めば良かった。
 でも、そういうの先に出させてもらってから引き出されると思ったんだもん。

 中庭に出てみると、露台には新たに大きな木枠が据え付けられていた。
 随分使い込まれた木製の木枠で、他の刑にもさんざん使われている物のようだった。
 高さは2m位あり、四隅から鋼鉄の鎖が下がっていた。
 そしてその脇に老婆が一人立っているのが見えた。

 鎖を引かれてギシギシと露台に上り、処刑用木枠の傍に行くと、作務衣に似た質素な衣装を着たやや腰の曲がったその老婆がジロリと私を見た。
「ヒッヒッヒ。姫様お初にお目にかかります。ローザ・アンドレアシスと申す婆(ばあ)にございます。古(いにしえ)のコロム刑の復活ということでいきなり呼び出され申した」
「よ、よろしくお願いします」
「ヒッヒッヒ。まあ、既に伝説となった刑故、執行の不手際も多かろうと思いますが、私も若い頃数度手伝ったきりですので、こう、処刑然とした形式がちょいとばかり崩れると思いますじゃ」
「『処刑然』というと?」
「ヒッヒッヒ。例えば、斬首なら、こう、恐怖を煽り、盛り上がり、バッサリといくじゃろ? それが、途中で『刀の持ち方はこうじゃったろか?』と躊躇(ためら)う間が入ってしまったりするということじゃよ」
「ひいッ! それって、なまくら刀で絶命するまで何度もぐじぐじ切りつけられるようなものじゃないですかぁ!」
「ヒッヒッヒ。まあ、その例えで近いが、きっちりやり通す者が誰もおらんでの。諦めて下され、姫様」
「いやあああ!!」

「えーと、どうするかの? 脱ぎなさるか?」
「ええ? 決まってないんですか?」
「ヒッヒッヒ。たった今言うたじゃろ、わしとて手探りですじゃ」
「うーん、この衣装はロッドシールの象徴みたいなものだから、出来れば脱ぎたいけど、わざわざ胸を晒すのもなぁ……」
「ヒッヒッヒ。ならば脱ぎなされ」
「ええっ?」
「ヒッヒッヒ。迷うた時は『そうしたいけど嫌な方』に決まっとろうが。処刑として」
「ちぇっ。はーい……」
 なんか何もかも見透かされてるみたいで、嫌なおばあさんだなぁ。

 手枷を外してもらい、構造の良く分からないベルト部分は兵士に手伝ってもらって、戦車隊の革スーツを脱いだ。
「ここに立て」
「はい」
 兵士に言われ、木枠の中心に立つ。
 木枠は露台に明けられた穴に差し込まれて固定されているので、木枠の真下も露台の面そのままだ。

 最初上の左右の隅から下がった鎖で万歳するように手枷を吊られ、少し足を開いて下の左右の隅からの鎖で足枷を固定された。
 今の私は王都での普段着、すなわち裸に国宝の貞操帯、国宝の首輪と手枷、足はブーツの上から足枷という状態だ。
 おっぱい丸見えで、乳首には国宝のピアスがいつも通りにぶら下がっている。
 それに今は頭にティアラも載せている。

「ヒッヒッヒ。誰にでも王女様とわかるのお」
「改めて言われるとちょっと恥ずかしいですね」
「ヒッヒッヒ。さーて、準備しますゆえ、そのままでお待ち下され」
「あの! えと、このあとどうなるんですか?」
「ヒッヒッヒ。まともな刑の最中なら、処刑される者の質問など無視させてもらうがの、まあよい。このあと城門を開け、見物人を入れますじゃ。その後尻をカラにしていただき、それからいよいよ処刑じゃ。刑が終われば市内引きまわしじゃな。そしてここへ戻り、地下牢に入れて一晩。明日のこの時刻に、同じようにこうして晒し、コロムを抜いて全て終了じゃ」
「ひ! ひいいいいいい! ひ、一晩なんて聞いてないッ!!」
 私はガチャガチャと鎖を慣らして叫んだ。
「あ、別に2晩でも3晩でも、狂うまで続けても良いぞヒッヒッヒ」
「そんなぁ!」

「では、見物人を入れて良いぞ」
 老婆の言葉で兵士が手を挙げて合図する。
 すると城門で待機していた兵士たちがガラガラと開門する。
 前日のお触れにより集まった民衆たちがぞろぞろと入ってくるのが見えた。

 城の建物や城壁に民衆のざわめきが反射し、中庭が俄(にわ)かに騒がしくなった。
 一応王都での私の普段の格好とはいえ、乳首まで丸出しで胸を晒したまま、四肢伸展状態で惨めな姿を晒すのはやっぱ恥ずかしい。
 その私の前に城下の民衆が集まる。
 すると急に様子がおかしくなってきた。
「おい! てめぇ! 押すな!」
「バッカ、オレも押されてんだよ!」
「このやろう! おまえが正面に行けよ!」
 私の正面の一角だけ、どうしても人が並ぼうとしないのだ。
 ねぇねぇ、そんなに自信あるわけじゃないけど、一応若い女の子が結構きわどいカッコでおっぱいまで晒してるんだよ?
 ほらほら、ロッドシール領のフェチぃ領民なんでしょ? ブーツとかヒール高めの無理して履いてんだから、ね?
 正面でかぶりつきでも怒んないよ?
 なんとかレンジャーショウだって後○園プリ○ムホール舞台正面の座席は『大きなお友達』がカメラ抱えて独占だよ?
 あれ? 今は指定席だっけか?
 それに最近のって、レンジャーの意味が削られてきて、「ジャー」しか付いてないよね。
 どうでもいいけど。

 あーもう。
 きっと正面にいたら、この処刑で私がひどい仕打ちを受けた瞬間に、勢いで目からビームでも出して焼き払われるとでも思ってるのね……
 そんなこと思うやつらは今すぐ焼き払ってやるーッ! って……うそだけどさ。

 そうだ!
 今思い出したけど、まだ長老にディルドー固定してもらってないや。
 てことは最悪、力を使って脱出することもできないわけだ。
 私は最悪の事態に真っ青になった。

「えーと、そこの人たち?」
「ヒッ!!」
 ちょうど学校の朝礼台の上から生徒の最前列までくらいの距離で、いいオトナがつかみ合いをしているので思わず声を掛けちゃった。
「あのさぁ、別に平気だから、正面から見たらどうです?」
 私、手足伸ばされて拘束されてるのに、なんかマヌケな会話。
「ヒイイイイ!! おっ!おおせのままにぃぃぃ〜〜!」
 平伏するようなしぐさをして、正面の男たちがしぶしぶ並ぶ。
「だから俺ァ早めに行くの嫌だって言ったんだ」
「バカ、近くで見ようって言ったのお前だろ?」
 頭を下げながらまだ口げんかしてる。
「もうやめなよぉ、ホントに消しちゃうよ?」
「ヒッ!ギャーーーーーッ!!」
 最前列の男の一人がバタリと気を失って倒れた。
 ありゃー、やりすぎたぁ。
 そこまで怖いんだ、トホホ。

「しずまれっ!!」
 老婆が突然、中庭中に響く大声で叫んだ。
 最前列のやりとりの様子も手伝って、みんな水を打ったように静まり返った。

「ヒッヒッヒ。よしよし、それでよい。皆の者、よく聞け! ここにおわしますジュリア姫様に於かれましては、民のために天より授かりし超常の御力で、誤りて城までも壊したことを大変気に病まれ、御自ら古(いにしえ)の忌まわしきコロム刑をお受けになることでその罪を償いたいとお申し出じゃ。姫は天の与え賜うた力を恐れるあまり、民が姫ご本人をも恐れることをお嘆きじゃ。コロムの恐るべき威力に自ら貫かれ、お前たちより遥に弱々しくなり堕ちた姫を引きまわして間近に見、その御心に触れて親しみを持つが良いぞ」
 なんかすんごい説明だな。
 大筋で合ってるけど、背筋に冷たいものが垂れる文言が満載じゃない?
「お、おう……」
「おう」
「おー」
 中庭のあちこちから、あんまりやる気なさげな掛け声が返ってくる。
 実感ないけど大義は理解してもらえたってことでいいのかな。
 結果はどうなるかわからないし、突き詰めて言えば長老があきれた通り、これは私が私自身にけじめをつけるための、本来やる必要の無いわがまま処刑なのだから。

「ヒッヒッヒ。では始めまするぞ。まずは清めの素をこれへ」
 今度は兵士ではなく侍女らしき人たちが小さな木のテーブルと桶と、厩にあった木製のトコロテン押し出し器みたいな浣腸器を持って来て、一人目がテーブルを置き、二人目が液の入った桶を載せ、三人目が浣腸器を桶に漬けた。
 更に桶と手ぬぐいを別な侍女が持って来て、最初の桶の脇に置いた。
 老婆は後から来た桶に手を漬けると、中で良く揉みあわせ、手を揚げると手ぬぐいで拭いた。
 そして浣腸器を取り、最初の桶の中身を吸い上げると私の後ろに回った。
 観衆が低い声でざわめく。

 そっか。
 私、これから排泄するところを皆に見せちゃうんだ。
 国民の奴隷だって宣言して、あの小さな檻に入れられたままおしっこするところ見られたことはあったけど、こんなに間近で衆人環視の中でうんちするのは初めてだ。
 でももうロッドシールのおかげですっかりお尻からモノを出し入れするのに慣らされちゃって、うんち見せるというよりはまだ体内に残っているあいつの忌まわしい精液の毒を抜いてもらう位にしか考えていない。
 普通に食事する日々も少しは続いたから、今現在のお腹の中は精液のカスじゃなくて、実際に食物由来のうんちなんだろうけど。

 不意に老婆の指がお尻の穴に触れる。
「ひ」
 小さく叫んだ。
 驚いたことに、やや冷たい指ではあったが、お尻の穴に触れる仕草が恐ろしく心地よい。
 尻の穴を知り尽したような指の動きで、多分浣腸液を少し指先に付けてからそっとあてがい、軽くシワを捲っているんだと思う。
 すると冷たい金属性のノズルが触れ、そしてするりと肛門を通過した。
「ひ!」
 不快さは無く、予測していた冷たさに呼応するように少しだけ声が出た。
 すーっと液が流れ込んで来る。
 わずか10秒ほどで一回目の注入が終り、ノズルが抜かれた。
「ヒッヒッヒ。これはこれは、さすが姫様。普通はこの時点で狂乱する娘も多いというに、誠に堂々としていらっしゃる」
 『慣れてますから』とは口が裂けても言いたくなかった。
「ロッ、ロッドシールに無理矢理慣らされたので……」
「ヒッヒッヒ。そうじゃったの。アレもひどいことをするのう」

 ゴボッ、とお腹の中で液が動いた。

 苦悶の表情で正面の民衆を見つめる。
 考えてみれば膣内のディルドーをロックしてもらわなくて良かった。
 万が一にも何か自制できない弾みで民衆の首を飛ばすなんてことになったら困るもん。

 ゴボッ、ゴボッと更にお腹が鳴ったあと、ギュギュギュギュギューーーーッと便意が襲ってきた。
「くはッ!」
 情けない顔を晒し、チャリンと鎖を引いて身を捩る。
 ゴゴゴゴゴゴゴとお腹が鳴ってガスが移動し、最初の便意は抜けた。
「ヒッヒッヒ。腹の中に一通り液が回ったようじゃの。下ごしらえの洗浄で体力を使うてしまっては困るでな、もうお出し下され」
「はい…… 桶を……お願いします」
「うむ」
 侍女から排便用の桶を受け取ると、老婆自ら私のお尻の下にあてがった。
「ごめんなさい、出します」
「うむ」

 やあああああ!やっぱ恥ずかしい!!

「あ、や、やっぱ…… あ…… ああ」
 浣腸液の性質が特別製なのか、バババと飛沫便にはならず、軟便がぬーーっと繋がって垂れた。
 肛門の感覚で、お尻から重量物が垂れ下がってるのがはっきりわかる。
 もとっ、と羞恥の着地音がしてお尻が軽くなったあと、引き続き、もう少し柔らかいのが後を追うようにしてボトボトと垂れた。
 ずっと前に王宮のお風呂でティアちゃんに浣腸された時もそうだけど、薬草系の浣腸って匂いが少なくて助かる。
「ヒッヒッヒ。もう一本」
 まだ残りも全部出切らないうちに、2回目の浣腸を注入された。
「ああ……」
 ほとんど我慢せずに排泄。

 都合3回浣腸されて腸内の洗浄は終わった。

「ハァハァ……」
「ヒッヒッヒ。これからが処刑本番じゃ。

 老婆が合図すると長い机と大きな籠が運ばれて来た。
 籠の中には数本のコロムの木が入っていた。
 更に長机の上には手桶が2つと、籠の傍に深い桶が1つ運ばれた。
 私が四肢を伸ばされて拘束されている所まで、強いお酒の匂いが届いて来る。

 老婆は手をお酒の桶で清め、水の桶でお酒を流すと、さっき浣腸のセットと一緒に運ばれていた軟膏のような物を指先に取った。
 老婆が後ろに回り、私のお尻の正面に屈んだ感じがするが正確な状況は全く見えない。
 正面の民衆の視線を追い、その表情の変化で身構えるしかない。

 さっきの浣腸の時のような、まるで羽毛が触れるようなソフトな指づかいでソコに触れられた。
 民衆の目が奇異なものを見つめるように輝く。
 とりあえず目の前で女の子がお尻の穴ホジられようとしているんだから当然だろう。
 女性たちは目を伏せるか、汚物を見るような眼差しか、ごく少数目を輝かせる者もいる。

 節くれだった指が、信じられない優しさで侵入してくる。
 え?
 もう2本入れられちゃったの?
 Vの字の指遣いで、アヌスを割り開くように拡げられる。
「いひィ!」
「ヒッヒッヒ。この黄金の装具が邪魔で全部は見えんが、こんな美しいケツ穴は初めてじゃ。全く使い込んでおらんか、もし慣れておるなら奇跡のケツ穴じゃな。濁りのない桃色が実に美しい」
「アハ、そ、そりゃどうも……」
 鏡で見たってそれなりの距離があるからそうそう自分では直接確認できない場所だけに、客観的にレポートして貰った上に褒められるとなんだか嬉しい。

 ふと正面を見るとギラついた目が並ぶ。
 やっぱ撤回!
 恥ずかしくて死にそう!

「ふむ…… ふむ? フウーム……」
 老婆はさんざんV字に開いたチョキの指で私のお尻の穴の柔らかさを調べまくると、こんどは指を抜いて両手の親指でクニッと拡げた。
「ひゃ!」
「フム……」
「ちょ、もぉいいでしょ?」
「……うむ、把握した」
 老婆はそう言うと手を離して立った。
 『把握』って何よぉ!


 先ほど運ばれた籠からコロムの木を一本ずつ取り出し、長さや微妙な太さをじっと見ながら一本一本選ってゆく。
 何度か籠から出し入れして何本かを比べたあと、やっと一本を取り上げた。
 そのコロムの木全体を、先ほど運ばれてきた大きな方の桶に漬けると、またきついアルコールの匂いが鼻に届いてきた。
 老婆は桶の中でコロムの木全体をしごくようにして清めてから、水を掛けて酒を流した。
 茎を持ってさながら刀を見定めるように目の前に縦にしてじっとみつめる。

 籠に突っ込まれている状態では真っ赤な葉ばかりが出ている様子しかわからなかったが、籠から取り出された状態ですぐ目の前でつぶさに見れるそれは、まるで超巨大なアナルビーズ。
 ビーズなんてもんじゃない。
 ビリヤードの球がビリヤードの棒で串刺しにされて連なってると思えばいいかも。
 奇しくも玉の数まで同じ10個。

 見事にまん丸な先端から縊(くび)れて太さ2cm程の茎が3cmほどの長さ続き、再び先端と同じくまん丸に膨らんで、また長さ3cmほどの茎となり、そしてまた膨らみ……と10個続いている。
 コブは、先端のものがやや小さく、根に向かうに従って大きくなっている。
 最後のコブから下は太さ3cm程の真っ直ぐな茎が60cmほど続き、その終端に真っ赤な葉が5,6枚ついている。
 その葉から下は本来根っこなのだろうが、刈り取られるために切断されたのか、葉から下は無い。

 老婆が葉の近くの茎を握り、先端を上に向けて持っている状態で、しなやかにしなりながらしっかり自立する。
 ちゃんとこれで根があれば自立して生えるのだろう。

 え?
 でも、それってちょっと硬すぎなーい?

 ちょ!
 やっぱり処刑って、モズのはやにえみたいに内臓貫かれちゃうの?!
 でもそうするとなると、こんどはあの丸い先端って残酷すぎない?
 やるんなら鋭利な先でグッサリやってよぉ!
 ひいいい
 丸い先端で内臓ぐじぐじにされるの嫌ぁ!!

 老婆が鋭利な刃物を手に取った。
 そうか、あれでザックリ内臓に道筋つけたあとに丸い先を刺すんだ。
 もうだめだ。

 勝手にバカな暴走していると、老婆は刃物でそのコロムの木の直線の茎とコブの境目付近の手前ぐるりに切れ目を入れ、更に縦の切れ込みを2カ所に入れると、そこから皮を捲って、さながら魚肉ソーセージのビニールを剥くみたいにビュルーッと先端まで片面を一気に剥がした。
 納豆のパックの中紙を剥がした時のように、粘つく糸を引きながら表皮が剥がれ、ルビー色に輝くコロムの木の中身が現れた。
 同様に反対側も剥がし終えると、ルビー色の中身はもう直立できないほどぐにゃぐにゃになっていた。

 老婆は消毒済みの手でその先端近くと茎の中ほどをグニュッと握り、私の前に歩み出て、そのコロムの木をうやうやしく掲げた。
「コロムの木に宿りし精霊よ! この者卑しくとも気高くとも、その心の在りようは全て精霊の思し召し。コロムに触れて心常ならざるとしてもそれはこの者が自ら招きしこと。身も心もコロムに委ねることによりて罪を贖い、再びこの身からコロムの離れし後は、罪無き身に戻りて皆と等しく相交わらんことを。よいか!」
 おー!と集まった民衆がそれに応える形であまり真剣みのない形式的な声を上げる。

 真剣な面持ちで掲げた手をそのままにクルリとこちらを振り向いた老婆の手には、すでに透明な粘液がまとわりついていた。
 コロムの木の茎の中身はルビーのように赤かったが、粘液は無色透明だった。

 掲げた姿勢のまま老婆が私の後ろに回る。
 私を見つめる民衆の視線は私の視線を潜り、私の下腹部へと集中している。
 あまたの視線の焦点となり、私はわけもなく興奮しはじめた。

 正直、私には、ほんの0.0001%くらいナメているところがあった。
 それは今までの経験から、その刑を受けた者皆が頭おかしくなったような檻やら油漬けやらでも私は狂わなかったので、きっとこんども大丈夫だろう、そうやって狂うことすら許されずに苦しみ続けるのが私の使命なんだと思っていたから。
 だから苦しいのは別にしても、そこまで精神を蝕まれることは無いのではないかと思っていた。
 しかしロッドシールに耳枷まで嵌められた時は、五感を奪われる恐怖に心がほとんど壊れる寸前まで追い詰められた。
 それは仕掛けもさることながら、調教に使われた時間の長さにも関係があったと思う。
 おじさまに受けた調教のような期限もない今回のような場合では、ロッドシールがキレなければ本当に危なかった。
 結果、私の粘り勝ちというか変態レベル勝ちというか…… だってあの時はポニーの爽快絶頂が終わっちゃうのが本当にヤだったんだもん!
 まあ、そんなこんなで、単一の責めで心がめちゃくちゃになることは、ひょっとすると免除されているのかも、と。

 しかし、『処刑』と名のつく行為は、やはりそんな甘いものでは無いのだと数秒後に知った。




(注)2013年現在、後楽○ ヒーローショーはシア○ーGロッ○で完全指定席制で上演されており、姫の情報はかなり古いと思われます。
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