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  お城  




§§ お城 §§

「台車を持ってきてあげなさい」
「はい」
「私は上で着替えるよ。何度やっても気持ち悪いものだね、転送は」
「はぁ、あたしもまだ具合悪いです。オエエ」
 ニルさんは光の漏れる方へおじさまと歩いて行った。

 ―― ガタガタガタガタ ――

 すごい音を立てて台車がやってきた。
「姫様ぁ、地球みたいないい台車ないんですよ。ゴム素材が貴重品なんで、車輪も全部木製なんです。我慢してくださいね?」
 私の檻を掴む。
「よいしょォ! きいいいいっ!!」
 ニルさん力持ちぃ!
 ゴットンと乗せられた。
 檻の重量がすごいせいか、ゆっくり押してもらえば、さほど振動しない。

 ゴトゴト押されて行くと、古臭いエレベーターの前に出た。
 ニルさんがボタンを押すと、ドアの上の今にも消えそうな暗い明かりの表示が、1つずつ移動する。
 暗闇の中に薄明るい光が上から降りてきて、ドアの向こうが明るくなった。
 ドアだと思ったのは板を連ねたアコーディオンカーテンのようなもので、まるで工事現場のエレベータか、映画で見たパリのアパルトマンのエレベーターのような、開けっ広げな代物だった。
 ニルさんがドアを手で開け、私を中に押し込んだ。
 自分も乗ると手でドアを閉め、小さな蓋を開けて中のボタンを押してから、上の方の階のボタンを押した。

「うふふ、びっくりでしょ? こんな旧式なエレベーター。アナムネはいいところですけど、機械モノは地球より遅れてますからねー。携帯なんて夢のまた夢ですよ。転送装置は暴力的な電力で機能するものだそうなんで、ここの技術でも可能だったらしいです」
 おしゃべりしながらゴトゴトとゆっくり上ってゆく。
 あまりゆっくりなので、各階の継ぎ目まではっきりわかる。

 3階ほど上がると、急に明るくなった。
 ドアがただの格子のようになり、階の様子が見える。
 人がいっぱい働いているのが見える。
 あ!
 目が合った!
 ひーーー!
 私とんでもない格好を見られちゃった!

 地上階に出てから6階くらいの高さまで上っただろうか、やっと目的階についた。

 私は眼前の光景に恐怖した。
 ずらっと人が並んで待っているのだ。
「ウーーーー!!」
「あら、お出迎え早いですね」
「オフッ、オフッ……」
「姫様、今泣いたらだめですよ。明るく笑うくらいでないと」
「オゥーーン……」
 ニルさんが指先で涙を拭ってくれた。

 エレベーターのドアは向こう側の人が開けてくれた。
「姫様か?」
「姫様のわけがない!」
「おおおお!」
「信じられん!」
「お后様そっくりだ」
 ずらっと並んだお年寄りが口々に声を上げながら、檻に入れられたままゴトゴト移動して行く私を見送る。
 エレベーターは各階の作業場のような一角に設置されている、いわゆる業務用エレベーターだったらしく、ここは王宮の一部とは思えないほど雑然とした場所だ。

 だんだん人垣が若い人になってきた。
「ウーーーッ!!」
 いやっ!
 恥ずかしい!
 明らかに見世物を見るような目付きで見ている人がいる。
 やっと大きなドアの前まで来たら、その側の何人かがドアを開けてくれた。

 ドアを抜けると一転して静かな高い天井の廊下だった。
 中央に細長く絨毯が敷いてある。
 キコキコと木のタイヤを軋ませながら、ニルさんが私の檻を押して行く。
 思い出した!
 王宮の通路だ。
 この絨毯の色は議場のある階だ。
 私は小さかったので、滅多に用の無い場所だった。

 廊下の突き当たりの扉は開いていて、そこから中へ入った。
 議場の中央の段までの階段に木の板が渡してあり、脇に屈強な兵士2人が立っていた。
 ニルさんが議場の段の麓まで私を押してゆくと、そこでその兵士二人が檻を掴んでスロープを引っ張り上げ、私の入った檻を壇上まで上げた。



§§ 議場での晒し者 §§

 しばらくすると先程の人達がゾロゾロと議場に入って着席した。
 全員が私のこと見てる〜〜!
 イヤッ!
 ニルさん、笑えったって無理だよぅ!

 さらにやや間をおいておじさまが入って来た。
 議場が一層ざわめく。

 おじさまは皆が着ているような裾の長い法衣のようなデザインの服に着替えていた。
 一瞬で議場が静まり返る。

「皆が待っていた王女が戻って来た。王女の力を必要とする者は私に申し出よ。以上だ」
 再び議場がざわめく。
「待ってください、その王女は本物なのですか? 王もお后も亡くなったと聞きましたが、なぜジュリア王女だけが突然現れるのです? しかもなぜそのように拘束されているのです。出して話を聞かせてください」
 うお! いいこと言う人がいる!

「残念ながら、この子はこの状態でしか力が出ないのだ。檻から出す訳にはいかない」
 うそばっか!
「ウーーッ!」
 抗議の声を上げる。

「王家が失踪している間、国民は非常な困難を強いられました。しかしその時我々は王家の力に頼り過ぎていたことを思い知りました。作物も収穫を上げる工夫や、風害を避ける工夫なども広まりました。現在ではあまり王女の力を必要としないで頑張っています。いまさら王女を連れて来られても何の役に立ちましょう」
 いいこと言ってるけど、なんかムカつくなぁ。
「ハハハ、天候の災害などは止めようが無いではないか。現に今も低気圧が近づいていると聞くが」
「それは…… そうですが。しかし、昔より早期に収穫する技が出来、農作物のほとんどは収穫を終えています」
「なんと。しかし王女の力を目の当たりに見れば、少しは気も変わるだろう」
 おじさまは鍵の入った例の棒を取り出して私に近づいてきた。
 ダイアルを合わせ、私の股に差し込む。
「ウーーーッ!!」
 こんな衆人環視の中で恥ずかしいところに鍵を挿入されてる。
 実際に中に鍵が入るわけではないのに、まるでおむつを替えられる幼児のような扱いが屈辱的でイヤだぁ!

 膣の中の動きが完全に固定され、なんとなくボーッとしてたのがすこしハッキリした。
「ジュリア、想像してごらん。今のお前の向きは南だ。ここから西南西300Kmの海の上に、お前のところでいう台風がいる。その付近の水が重くなるよう、粘りつくよう念じるんだ」
「ウー」
 目の前にないと、うまくイメージできているかさっぱりわからないけど、お母さんにも出来たんだ、私だって……

「ウウウーーー! ウウーーーー! ウーーーーッ!!」

 ハァハァ。
 すぐに鍵が引き抜かれた。
 ドロンと中身が動く。
「アアン……」
 私の切なそうな顔に、目をキラキラさせてる若い人もいる。
 ちぇっ。
 こっちはそれどころじゃないもん。

 ざわめく議場。

「間もなく観測船からの連絡が入ると思うけどね」
「私が無電室へ連絡してきます」
 若い人が一人議場を出て行った。

 またざわめく議場。
「よしんば」
 初老の一人が切り出した。
「低気圧が消えたとして、だ。今更生産の多くなった工業や、収穫の上がった農業、国王などいなくてもちゃんと民主的に自力で自己統治している国民を、だれが止めることができよう。この10年で、王家など不要になったのだよ。どうする、コメドゥよ」

 さっきの若い人が駆け込んで来た。
「てッ! 低気圧が、消滅しました!」
 議場がどよめく。
「どうかね? 思い知ったかね」
「フン、お前に風害対策の万全さを見せるチャンスが無くなったのぅ」
「なんと言おうと、私が王だ! 従わぬものは皆殺しだ!」
 あの目!
 おじさま本性剥き出しの目!
「コメドゥよ、やってみよ。わしら貴族院・衆院皆殺しにして、つぎは言うことを聞かぬ国民をも皆殺しにするのか? 実のところお前には国民全員で感謝しとるよ。王家に頼らない道を自分たちで切り開くチャンスを与えてくれたのだからな」
「くそっ! 今日のところはこれでお開きだ! 明日から目にもの見せてくれるわ!」
 ニルさんに目配せして、兵士に私を壇の下まで降ろさせると、台車を押して議場をあとにした。



§§ 放置 §§

 私がニルさんに連れて来られたのは、さらに上の階にある、玉座の間だった。
 王と王妃の座の近くに金縁の赤い絨毯が敷かれ、その上に降ろされた。
 ニルさんは台車をどこかへ片付けると、ワゴンを押して戻って来た。
「姫様、おなか減ったでしょ。お食事にしましょう」
 ワゴンの上には太いピストルの上にタンクがついたような物が載っていた。
 ニルさんが檻正面に来て、手を突っ込み、私の口の蓋を外す。
「ホアアアァ〜」
 そこへ正面から太いピストルを差し込み、レバーをぐっと握るとドロドロの食べ物が直接喉の奥へ流れ込む。
「オゴッ! ゴクッ! オエッ! ゴクゴク」
 一塊流し込まれると、またピストル型のレバーを操作し、全部で3回分飲まされた。
 最後に水を流し込まれ、口の蓋を戻された。
 お腹は膨れたけど、あまりの味気無さに涙がこぼれた。
「今度はおトイレですよー」
 お尻の方でガチャンと音がする。
 檻の一部が開いたようだ。

 紙袋を敷いたおまるのような容器が後ろから股の真下に差し込まれる。
 昔ながらのガラスの注射器のようなものの先に、短いゴムチューブがついたものが準備され、視界から消えた。
 頭が動かせないので、すぐ背後で行われていることも見えない。
 お尻がスーッと冷たくなって、注入されたんだとわかる。
 しばらくグルグル言うまで我慢して、そのままブリブリと排泄。
 おしっこも出た。
 頭がボーッとしてるので、死ぬほど恥ずかしいけれどもそれが抗う行動に繋がらない。
 ただ受け入れ、涙を流しながらウンチした。

 広い部屋に私の臭い匂いが拡散してゆく。
 お尻を湿った布で丁寧に拭われ、ディルドーが戻された。
 ニルさんがおまるを持って消えた。

 しばらくしてニルさんが戻って来た。
「姫様、コメドゥ様は苦戦されているようです。姫様本来のお仕事が出来なくて申し訳ありません。ここまで時代が変わるとは予測できなかったようです。姫様はしばらくここで待機です。これ、あちらから持ち込んだ無線式のチャイムです。こっちを私が持って自室で休んでいますから、用事があったらこのボタンを押して下さい」
 ニルさんは私の後ろ手の手首に紐を通し、手に何かを握らせた。
「押してみてください」

 ―― ピンポーン ――

「ね? こういう便利に慣れてしまうと、こっちの生活がイヤになりますね、ウフフ。すみません、私も体力の限界なので、少し寝てきます」
 チャイム本体を抱えてニルさんが消えた。

 玉座の間で完全拘束の私。

 運命に翻弄され、立ち向かって挫折し、そしてここにこんな姿で戻って来た。
 これが本当に国民のためになるの?
 さっきの議場の話だと、こんな私ですら不要な様子。
 いったいどうすればいいのよ!

 ただ、たった今現在の快楽に身を任せればいいのか……

 怒りが収まると、膣内の筒の動きが活発になり、壁の模様も霞むほど、淫らな気持ち良さに襲われた。

 議場での晒し者。
 まだまだ続く晒し者。
 何も出来ない、ただのパーツに成り下がった私。
 議場の人々の、モノを見るような目。

 台風すら消滅させ、山すら割ることができる程の力を持ちながら、その力を奪われ、性器を封印され、手足それに口の自由、さらには排泄の自由まで完全に奪われた私。

 ゾクゾクゾクゾク!

 手足をガタガタ揺すってみる。
 やっぱりすべての自由を奪われてる。
 王女の力など不要と決まったら、このままゴミ溜めへ運ばれ、ポイッと捨てられるんだ。

 はう!
 はう!
 はう!
 なんで蔑まれると興奮するんだかわかんない!
 もうだれか助けてよう!
 絽以ぃ〜!!

 玉座の間で、正面を向いたまま、ハラハラと涙をこぼし、股間からはトロトロと淫汁を滴らせて絨毯を汚す。

 もう最低だ。
 私って。

 そのうち疲れが限界に達して、そのまま寝た。



§§ 檻詰放置完全拘束王女1 §§

 目が覚めた。
 何も変わらず、寒々しい玉座の間に一人。
 拘束のうっ血はあまり出ておらず、あの犬の訓練が効いているのかと思うと、私をここまで貶めるための用意周到過ぎる計画に寒気を覚えた。
 おかげでこんな目にあっても、発狂もせずにのうのうと生き延びているわけで。
 またぶわっと悲しくなってオイオイ泣いた。

 広い部屋に私の嗚咽がこだまする。
 だれか鼻水拭いてよぅ!
 顔がぐちゃぐちゃだよぅ!
 その惨めさがますます嗚咽の元になる。

 そうだ、チャイムを…… だめだ、ニルさん疲れててカワイソウ。
 あんないい人なのにおじさまの手下なんだよなぁ……


 また不意に膣の筒が移動する。

「ンンンン……!」

 他に全くなんの楽しみも無いので、余計に神経がそのことばかりに集中してしまう。
 膣の蠢きの気持ち良さが、この不幸のどん底にいる私に、僅かばかりの幸せを与えてくれる。
 全てを奪われた私が、唯一与えられた幸に、抗うことができるはずもなく、おじさまの策略のままにヌチュヌチュと淫らな心の開発を進められてしまう。

 もう充分だよぅ!
 これ以上ヘンになるのはイヤぁ!

 でも気持ち良さに逆らえない。

 ヌヌヌヌヌヌ

 くちゅっ

 トロッ

 ヌヌヌヌヌヌ

 くちゅっ

 トロッ

 はふつ……

 はふつ……

 はふつ……


 だんだん日が暮れてきた。

 誰も来ない。

 またしばらく眠った。



§§ 檻詰放置完全拘束王女2 §§

 目が覚めると、涙と鼻水が乾いてガビガビになっていた。
 辺りは明るくなっていたので、あのまま一晩眠ったようだ。

 しばらくしたらニルさんが来た。
 昨日と同じように食事を与えられ、排泄をさせられた。

 ずーーーーっとこのまま。

 ずーーーっと静かなまま。

 『見たこともない国民のことなんて知らない! あたしが生贄になっても、誰も有り難がらないわ!』

 絽以の前で叫んだことを今思い出した。

 私、ちゃんと生贄になってるかな。
 いったい、誰に捧げる生贄なんだろう。
 国民に捧げる生贄でいいのかな。
 私がこんな目に遭っても、結果、皆の役に立てば報われる。

 でもなんだかもう、生贄はご用済みみたい……

 惨めだよぅ……

 惨めだよぅ……

 なのにどうしてこんなに感じちゃうんだろう……

 自分で膣の蠢きを求め、それにも飽き足らず、お尻の穴に突っ込まれてるディルドーを噛み締める。

 ピクピクピク

 性器の動ける部分を可能な限り動かして、貪欲に貪欲に淫らな穴の発する快感を少しでも多く感じ取ろうとする。

 檻の中でずっと飼われ続け、もう充分淫乱なのに、もっともっと淫乱に壊されちゃう。

 ちがう。

 もう私自身の責任だ。

 自分で壊して気持ちいいんだ。

 アハッ……

 もうどうでもいいや。

 手足はまだあるのにダルマと変わらない私。


 また夜が来て、また食事と排泄。

 そして眠る。



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